福井大学は、IoTソリューションを提供するケアコムと提携し、病院等の医療施設内における医療従事者の手指衛生の徹底に協力しています。看護師が持ち運ぶ手指消毒ボトルにセンサーを装着。このセンサーが0.2秒ごとに発信するBluetooth® 信号をロケーターやBluetooth受信機を通じてケアコムが提供する3HS-AIモニタリングシステムが集計を行います。ボトルがプッシュされると位置情報の送信が中断し、ポンプ押下情報に切り替わり、それを情報として検知することで、看護師が適切なタイミングと場所で手指消毒を行っているかをモニタリングします。

この度、ケアコムのSMILEユニットマネージャーを務める坂本祐二氏と話す機会に恵まれ、Bluetoothを用いた最新ソリューションによる医療機関での消毒管理の強化について、同氏にご説明いただきました。

坂本祐二氏とのQA

このソリューションの特徴、および医療機関や患者の方々への影響について教えていただけますか?

手指衛生は、院内感染防止に必須の標準的な予防策となっています。手指衛生の適切なモニタリングシステムを導入することで、院内や医療施設内で手指消毒の習慣化を励行し、院内感染のリスクの低減に寄与します。

このソリューションは、世界保健機関(WHO)が定める手指衛生を行う5つのタイミングのうち3つのタイミングとして、医療従事者が患者様に触る前、触った後、そして患者様の周囲に触った後を自動で検知します。いずれも手指衛生を行うべき重要なタイミングです。センサーデバイスは各医療従事者の位置情報と、手指消毒剤がスプレーされた事をBluetooth®信号で送信します。これに基づき、手指衛生の監視システムが手指消毒剤の使用者と、それがいつ、どこで行われたかを可視化します。


このソリューションはいつから使われているのですか?

実証実験は約3年前から行われてきました。ソリューションとして実用化されたのは2019年夏になります。


福井大学医学部附属病院以外にも、このソリューションを利用している病院や組織はありますか?

名古屋大学医学部附属病院も、このソリューションを使っています。またこれまでに期間限定ですが、5つの病院に提供実績があります。他にもICUといった高度救急医療の現場における導入も検討されています。

 
ケアコムのモニタリングシステムを利用している病院では、実際にどのような改善が見られていますか?

福井大学医学部附属病院によれば、医療従事者が患者様への対応する際の手指消毒が300%以上増加したとのことです。また、名古屋大学医学部附属病院の行った実験では、看護師が使用した手指消毒の合計使用量が40%増加しています。このソリューションの便利なところは、手指消毒を自動でモニタリングするため、医療従事者の日常業務に支障が無いという点です。


御社の手指衛生監視システムにおいて、
Bluetooth技術は、具体的にはどのように活用されているのでしょうか?

Bluetooth技術は医療従事者の位置特定と、手指消毒剤の使用検知に使われています。センサーは手指消毒剤のスプレー部分に取り付けられており、消毒剤を持ち運ばない医療従事者は位置情報専用のセンサーを携帯しています。センサーデバイスはBluetoothの無線信号で常時発信しています。そしてロケーターが到達角度技術で信号を受信します。これにより高精度の位置情報が得られ、医療従事者の病室からの出入りを監督者が確認できるようになります。手指衛生が保たれた事を確認するため、手指消毒剤のセンサーはスプレーされた事も検知します。これは看護師が持ち運ぶ手指消毒剤でも、固定された消毒剤でも検知します。また医療従事者が定められた箇所に設置されたスプレーを使用すると、監視システムが使用者を位置情報から検知します。これら受信したデータを組み合わせることにより、病室に入る前後における医療従事者の手指衛生の状態が、自動でモニタリングできるようになります。

 ※「本取り組みは総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)(課題番号:181605001)の一環である」